今回は、「筆順が理解できない、覚えられない」という問題が起こる理由や改善方法について考えてみたいと思います。
・何度同じ文字を練習しても覚えられない。
・でたらめな筆順で書いてしまうので直すが、結局また戻ってしまうなど。
いくら練習しても直しても覚えられないと、親や支援者もどうしたら良いのか悩むと思いますが、子どももやる気が無くなったり自信を失ってしまったりする場合がありますので、ぜひ早めに改善してあげたいですよね。
この問題の改善に必要なことは、やはり対症療法的な考えややり方ではなく、問題の根本的な理由を理解したうえで、根本的なアプローチをすることです。
筆順には原則がある
筆順とは、文字を書く時の順番のことですね。書き順と言ったりします。
そしてこの筆順には原則があるのをご存じですか?
例えば「上から下」「左から右」、また左払いが先など、他にもいくつかあるようです。
私的にはこれは納得です。
なぜなら、上から下というのは、重力の方向に合わせた動きですし、左から右という、肘や手首の動きの仕組みに合っていると思うからです。
自然の法則に沿って、上から下とか左から右という身体機能の発達が順調に進んでいれば、字を書くとか筆順に沿って書くという動作はスムーズにでき、自然と形も整うということではないかと思います。
筆順の理解ができない、覚えられない
ではなぜ自然の法則に則った動作がスムーズにできないのか、筆順が覚えられないのか、その理由を考えてみたいと思います。
これは、「身体と脳の関係」にあります。
そしてその関係ができるには、その子の身体が何を体験したのか、ということと関係があります。
- 真っすぐ、身体の真ん中を意識できる体験
- 直線や曲線の体験
- 空間を感じるという体験
そしてその情報が脳に届くことで、徐々に方向とか順番ということがどういうことなのかが分かってくるのです。
例えば
- 首が座るまでに中心が分かる。
- 寝返りの時代には、体幹が捻じれるなど曲線の体験ができる。
- 姿勢が保持でき、協調的な動作もできるようになるにつれ、身体に「正中線」ができる。
まだまだありますが、このように身体機能が育っていく中で、上下左右、前後という三次元の空間を体験でき、中心も定まっていきますし、右から左などの正中線を超えるという動作も適切にできるようになっていきます。
これが、字を書くとか筆順を理解することの土台になっていると理解できるかと思います。
身体と脳の関係が適切に築けていない状態とは?
しかし以下の様子があった、今このような様子が見られる場合は、この動作が中途半端になる可能性があります。
- 赤ちゃん時代から大人しかった
- 赤ちゃんの時に向き癖があった
- 寝返りは片方だけ
- ずりバイやハイハイが変形
- お座りが安定しない
- 姿勢がグラグラする
- いつまでも利き手が決まらず両手使いのまま
- 歩いている時に手が振れない、手と足のバランスが取れないなど
これらの様子がある、あったという場合は、「身体と脳の関係が適切に築けていない」状態と言えます。
そうなると、適切に目や腕や手を使うことに困難さが現れてしまう可能性があるわけです。
身体と脳の関係
このように、字を正しく書くとか筆順を覚えるなどの能力が育つためには、「身体と脳の関係が良好」であることが必要です。
身体が正しく動いてくれるかどうかが、脳にとっては大事な情報になるわけですが、それが正しくないと脳は、身体を正しく使うための指令が出せず、誤情報により間違った指令を出してしまいます。
こんな感じです。
正しい指令を出せない脳
脳はあまりお利口ではありません(笑)
身体から上げってくる情報をそのまんま受け取り、その情報をもとに指令を出すのです。
もし私たちが、筆順を覚えられない子どもになぜできないの!と怒ったとしたら、脳はこう言うでしょう。
そう言ったって、赤ちゃんの頃は右側ばっかり向いてたし、寝返りも右側だけなんだから、右側の情報は入ってきたけど左側の情報はもらえなかったよ。
追視しろとか言ってるけど、そもそもずっと大人しくて筋の張りも育ってないから眼球を動かす指令も出せなかったし!
筆順っていったって、身体に正しい指令が出せないよ。
だって正しい情報が来ないんだから!!
かなり混乱してますね(汗)
ということで、筆順が理解できない、覚えられないのは、「筆順を理解できるための身体と脳の関係が築けていないから」、なんです。
その子の努力が足りないとか、能力が足りないという判断をするまえに、赤ちゃん時代の動作や今の年令になるまでにどのような遊びや活動が好きだったか、苦手だったかなどを確認してみてください。
私たち支援者がこの問題の根本的案理由を理解できることが、とても大事なのです。
筆順が覚えられるようになるには
ではこの問題を改善するには、どうしたら良いのでしょうか。
筆順というものを理解できない、覚えられないという問題の根本的な理由は、身体が適切に動けたかとか姿勢が整っているのかというところにあります。
ということは、ここをやり直しすることが必要になります。
今まで正しくない動作をしてきたということは、ず~っと脳にご情報を与え続けているということなので、そのままの状態で字の練習を何百回やっても、脳の方では相変わらず間違った指令しか出せない状態になっています。
間違った動きを訂正して、正しい動作や動きをすることで、脳に正しい情報を与えることができ、正しい指令を出せる関係を築けるのです。
筆順の覚えるのに必要な動作とは?
どんな動作が必要かというと、重力に抗う動き、首を左右両方しっかり動かすこと、体幹を左右にねじること・・・などなど。
これらを、その子の姿勢の育ちの状態に合わせて行います。
もし首の座りが完成していない場合は、床に寝た状態で行う必要があります。
また「上下、左右そして前後を感じる」体験を十分積み重ねることが必要です。
乳幼児であれば大人の手助けが必要でしょうし、幼児以降であれば簡単な体操や運動、遊びの中で体験できるでしょう。
そしてこの体験はまず、身体全体(粗大運動)から始め、手先(微細運動)でも楽しめるかと思います。
どちらにしても大事なことは、子ども自身の身体がその動きを体験する、ということです。
※子どもリバースでは、発達を回復するための「ぽじまる体操・ぽじまる感覚エクササイズ」を作り、支援者を養成しています。
さいごに
字を書くことや筆順を覚えることは、私たちは練習して覚えてきたんだから子どもだってできるはず、と思うかもしれませんが、今は自然に獲得するということが難しい時代になっていると言えます。
発達の土台となる体つくりに必要な「環境」が貧困になっているように感じます。
なぜならば、身体を思い切り使って遊ぶとか体験する、という機会が少なくなっていますし、早い時期からアカデミックなことができるように求める傾向もまだまだあります。
発達には順番がある!
YouTubeを見ると、「うちの子はもう寝返りできた、歩けた!」などの動画が上がっていますが、それらの動作を見ると、正しくないことが多いです。
親心から言えば嬉しいのは分かるのですが、それが脳にとっては誤情報になるわけですから、早いから良いと思うのは危険です!
発達には必ず順番がありますし、その動作の一つ一つが正しくしっかりとできることがとても重要だということ、そしてそれができず大きくなってしまった場合は、もう一度それをやり直すことで、脳の誤解も解ける可能性があります。
そうすれば自ずと、筆順の理解が進み、自分がどこが分からないのかということも分かってきますから、自分で間違いを正すことや、正しい書き方も理解できるようになる可能性が高まってきます。