話を聞かない、理解せずに行動してしまう子の理由と支援

~姿勢の発達と認知、行動との関係~

ちゃんと話が聞けない、理解してないのに行動してしまう、細かい作業が得意だけれど、それに没頭してしまい、声をかけても無視、行動の切り替えが難しい。

そのような子どもの問題が起こる理由には、「姿勢の未発達」という発達の宿題が残っている可能性があります。

寝ているだけの赤ちゃんが、座る、立つなど、生後約1年の間に、姿勢の発達は目覚ましく進みますが、その姿勢発達にもプロセスがあり、その中で認知力も育っていきます。
しかしそのプロセスの中に、発達の宿題を残している子どもがとても多くなっています。

今回は、この姿勢発達と認知や行動との関係についてお伝えしたいと思います。

姿勢とはなにか

姿勢とは一つに、「床に対しての体位の状態」という概念があります。
まだ寝ている状態の子どもは、床に対し平行な体位で過ごしますが、徐々に顔を上げ、腰まで姿勢が発達していくと、床に対し直角な体位、つまり座位ができるようになります。
そして立つことができるようになると、床に対し垂直の関係になります。
このように、姿勢とは床に対してどのような体位になるのか、姿が見えるかということがあります。

重力との関係

またもう一つは、「重力との関係」です。

この地球には重力と引力があるわけですが、姿勢が発達していくということは、“重力に抗う”という関係が起こります。
なので、姿勢がぐらぐらするとか、すぐに床に突っ伏してしまうという状態は、姿勢が保てない=重力に抗えなくなってしまう、ということになります。

実はこれは私たちが体調の悪い時、ストレスを抱えているなどの時も起こりうる状態です。
具合が悪くなると、正しい姿勢で座り続けるとか立ち続けることが困難になり、身体を倒して寝た状態になりたくなりますよね。
つまり、重力に抗うということは健康であることや体調が良いなど、エネルギーも必要、ということなんですね。

姿勢の発達にはプロセスがある。

言葉が出る、読み書きができるなどの発達にもプロセスがありますが、姿勢発達も発達の法則に則ってプロセスが進んでいきます。
例えば「上→下に進む」、というプロセスがあり、「頭部、体幹、下肢」という順番で姿勢の発達が進んでいきます。
首が座る、腰が座る、二本足で直立できる、という順番ですね。

《姿勢発達のプロセス》

姿勢発達のプロセス

姿勢発達は「目」から始まる。

姿勢の発達は頭部から、と言いましたが、実は更に細かく言うと、「目」からスタートすると言えます。これは意外と知られていないかもしれません。

なぜ目からといえるかというと、姿勢の発達に必要な条件に、「筋の張り(筋緊張)」の育ちがあり、それが目から始まるからです。

赤ちゃんがなぜちゃんと座ったり立てたりするようになるのかというと、この筋の張りが生まれてくることで、顔を上げるとか、屈曲姿勢から徐々に伸展(伸びる)姿勢にもなれますし、頭部や腰を安定させる、つまり体位が保持できる(姿勢の保持)ができるようになっていきます。

注視ができるかどうか

そしてこの筋緊張は、目からスタートするので、姿勢発達は細かく言えば、「目から始まる」と言えるのです。

赤ちゃんがじっと見るようになる、自分の手を見るようになる、という発達は、この筋の張り、つまり筋緊張が育っていくことで可能になります。

これを発達的な言葉で表現すると、「注視」ができる、という状態です。
この注視がしっかりできないまま過ごしてしまうと、姿勢の発達にも宿題が残りますし、実は認知にも問題が発生する可能性が出てしまうことになります。

乳児検診で指差しができない、できるようでちゃんとできていない、という状態は、注視がまだできていない、つまり姿勢発達と関係しているのです。

乳児検診で指差しができない、できるようでちゃんとできていない、という状態は、注視がまだできていない、つまり姿勢発達と関係しているのです。

首の座りが完成していないという「発達の宿題」から起こる問題。

筋緊張が進み、注視ができるようになると、発達のプロセスの上→下に則って、「首の座り」に発達が進んでいきます。
頸椎の部分ですね。
なぜ首の座りが可能になるのか、なぜ頸椎の部分の筋緊張が進むかですが、これは先ほどの筋緊張が育っていくからです。
そしてここでとても大事なことがあります。

それは、「身体を動かす」という体験が十分あるかどうかということです。

首は頭部の一部で、赤ちゃんの身体の中では一番重い部分です。それをしっかり保持できるという発達が進むためには、しっかりと筋緊張も育っていく必要があります。
そのためには、身体を動かすこと、動かしてもらうことで得られる、感覚情報が必要なのです。

主には固有感覚と前庭感覚になりますが、これからの感覚は、身体がじっとしたままでは、首の座りに必要な情報が十分脳に届きません。
しっかりと身体が動くことで、これからの感覚情報が神経を通じて脳に到達し、その情報が脳で処理されるという流れがあり、その流れの中で筋の張りが起こっていきます。

ですから、赤ちゃん時代におとなしかった、あまり泣かなかったなどのお子さんは、姿勢発達が進みにくいという問題が起こってしまう可能性があります。

姿勢発達を進めるために必要なこと。

ここまでのまとめをしてみます。

  • 姿勢発達にもプロセスがあり、上→下に向かって進む。
  • スタートは目から始まり、首が座る、腰が座る、二本足で立てる、の順に進む。
  • 姿勢発達には、筋の張り(筋緊張)が必要。
  • 筋緊張が育つためには、固有感覚と前庭感覚の両方が育つことで進む。
  • 感覚情報は、身体が動くことで得られる。

この中で、私たち支援者ができることの中に、筋緊張を育てるための体験をする機会を作る、ということがあります。

筋緊張を育てるためには、「ぎゅ~っ」とか「グッ」とかを感じる固有感覚を育てる遊びや体験、または「ゆらゆら」するとか、「くるくる」するなどの前庭感覚を育てる遊びや体験も楽しいと思います。

一つ気を付けて頂きたいことは、もしこれらの遊びをした時に、テンションが上がってしまったり嫌がったり怖がったりする場合は、その子に合っていないサインですから、すぐに止めて様子を見てください。

感覚情報は、まず「心地よい、安心できる」という様子が見える程度の刺激が合っています。
なので、ある子は思いっきり走るとホッとしたような表情を見せるかも知れませんし、ある子はちょっと揺れるだけでもういいよ、とか怖かったという態度を見せるかも知れません。

感覚情報は脳にちゃんと届くと栄養やお薬の役割をして、発達を促してくれますが、間違うと副作用にもなってしまうので、あくまでも子どもが安心して楽しんでいる、終わった時に落ち着いている、という様子があることを念頭において、遊びを楽しんでください。

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