家庭や一対一の対応ではそれほど困っていなかったのに、入園や入学で集団生活に入ってから、みんなと一緒の行動ができない、ルールを守れない、友だちといざこざを起こすなどの問題が現れる子どもたちが増えています。
何度言って聞かせても問題行動が改善しないと、どうしたら良いのか悩みますよね。
今回はそのような「集団生活に馴染めない、順応が困難」の理由や改善方法について考えてみたいと思います。
集団生活に馴染めない子どもの様子。
- 登園時にお母さんと離れられない、
- おもちゃやぬいぐるみなどを持ってきて離せない。
- 友だちといざこざを起こす。
- 指示に従うことが困難。
- 興味のあることには積極的に参加するが、そうでないと参加しない。
- 勝手な行動をする。
などなど、集団生活を送るうえで必要な理解力や社会性などの育ちが足りないという様子が見られると、もしかすると発達に何か困難があるのでは、と感じるかも知れません。
また昨日は問題がなかったのに今日は調子が悪いなど、状態が変わりやすいということもあります。
集団生活という「環境」と発達の関係。
発達に必要な要素はいくつかありますが、子どもたちがどのような環境で過ごしているのかということもその要素の一つです。
ですから、集団生活に馴染めないという理由になっている可能性があります。
また一言に環境と言ってもさまざまあり、例えば自然環境、家庭環境、園や学校の環境などがあります。
集団生活とは、複数の人(大人も子どもも含めて)が同じ建物や部屋などで過ごすことですが、
例えば家庭という環境とは違いがありますし、同じ学校でも教室と体育館では物理的な環境が違うわけです。
子どもたちはさまざまな環境で生活しているわけですが、その環境の条件や変化などが、集中するとか人の話を聞くなどの能力、つまり発達に影響を与えているのです。
では環境は、発達にどのような影響を与えるのでしょうか。
環境から受け取る「感覚情報」と行動の関係。
例えば、騒音が聞こえる、大人同士の人間関係が良くないなどでは、ストレスから呼吸が乱れたりします。
また、1クラスの人数が多い、教師の声や喋り方が分かりにくいなどでは、気が散ってしまったり分かりにくいことで理解することにも影響を与えている可能性があります。
これらを感覚の情報として捉えてみると、聴覚情報や触覚情報など、様々な「感覚情報」があることが分かります。
そのように、私たちは環境から様々な感覚情報を受け取って、それをもとに、場に合った行動をしているわけですが、その仕組みは以下のようになっています。
感覚情報を受け取る器(身体)→脳→身体(行動)
このように、環境の中で聞こえたり見えたり、肌で感じること、つまり聴覚や視覚、触覚などの感覚は、「感覚情報」となって、脳に届けられ、その情報が行動になる、という仕組みがあります。
この仕組みが適切に働かないとすると、最終的な行動に問題が現れることになります。
ということは、この仕組みがうまく機能するように支援する、サポートすることができれば、集団行動に馴染めない、という問題も改善する可能性があります。
ではどのような支援やサポートが考えられるでしょうか。
集団生活の中で、適切な行動を促すためにできること。
- 環境を整え、感覚刺激を調整する。
- 健康に留意する
- 感覚を育てる。
1.環境を整え、感覚刺激を調整する
まず「環境を整え、感覚刺激を調整する」ことですが、発達グレーゾーンの子どもにとって「安心できる環境」があることがとても助けになります。
発達に課題がある子どもたちにとって、環境の変化や視覚、聴覚情報が多すぎることにより、不安感を感じやすくなってしまいます。
そして不安を感じている、ということを本人は認識できないことが多いので、泣いたりイライラしたり・・という表現になって現れます。
視覚、聴覚情報を多くせずシンプルにする、整理する、分かりやすく伝えるなどのサポートがあると安心しやすいです。
2.健康に留意する
次に「健康に留意する」ですが、感覚情報を受け取るための器は身体にあるので、健康であることがとても大事です。
例えばアトピーなどで肌が荒れていたり、中耳炎などで聞き取ることが困難なため、情報が正しく入力されないことで正しく理解できない、誤解したまま行動してしまうなどの問題が起こってしまうことがあります。
健康な体つくりは発達の土台つくりと言えます。
3.感覚を育てる
そして最後に「感覚を育てる」です。
私たちにはいくつかの感覚がありますが、その中でも「基礎感覚」を育てることにより、安心感が育ち、集中力や理解力、また社会性などの能力も育っていくことができます。
しかしこの感覚の育ちにはプロセスがあることと、子どもによってはすでに感覚の未発達が起こっている可能性があります。
特に鈍麻や過敏だった場合、情報を適切に受け取れない、情報を処理することが困難ということが起こっている可能性があります。
そうなると子どもは不安を感じてしまいます。
集団に馴染めないことと感覚という関連があるということを、支援者として理解できていることがとても大事だと思います。
そうすると“あ、今声が大き過ぎたかも“この見せ方よりもっと分かりやすい方法を見つけよう!“などなど、どのような支援が適切なのかも気付き、子どもも安心したり理解しやすいことで自信も育つ可能性があります。
最後に
今回は、集団生活に馴染めないことと環境の関係についてお伝えしました。
私たちは環境の中から、様々な感覚情報を受け取って行動をしているわけですが、感覚の未発達などがあることで、その適応能力、つまり発達にも凸凹が起こってきます。
そしてそれは「不安感」となり、日々の生活や学習などに困難さとなって現れてきます。
私たちは子どもたちの問題行動の裏には、そのような不安感があることをまず理解することが必要ですし、その改善のために、健康や感覚の育ちなどの「からだを丁寧に育てる」ことに目を向け、できることから取り組むことがとても大事だと思います。